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河本緑石の書簡/はじめに [人物に関すること]

保阪嘉内は終生、1冊のスクラップブックを大切にしていました。
その前半は新聞の切り抜きですが、後半には3人の友からの手紙が貼り込まれていました。
その3人とは、いうまでもなく小菅健吉、河本義行(緑石)、宮沢賢治です。

スクラップブックには
「書簡集成(アザリアの三人から)……大正一二・八・三〇迄……」
という表題の頁に続いて
「第一 小菅健吉編」(26頁、58通)
「第二 河本義行編」(18頁、51通)
「第三 宮沢賢治篇」(38頁、73通)
の合計182通の書簡が受け取った順(注)に貼り込まれています。
小菅健吉と宮沢賢治の二人からの書簡は、大正12年8月30日までに手許に届いた分をほぼ網羅していると思われますが、河本義行からの書簡については「第二 河本義行編には散逸せるもの多きを遺憾とするものである」と注記しており、実際にはもっと多くの書簡が存在したものと思われます。

スクラップブックs.jpg
スクラップブック(個人蔵・筆者撮影)

保阪嘉内が何を思って3人の書簡を整理したのかは不明ですが、その2日後に関東大震災が起こり、嘉内は救援物資を持って妹のいる東京に向かいますので、もし8月30日に書簡の整理を思い立たなければ、これらの書簡も散逸してしまっていたかも知れません。
そういう意味では、まさに絶妙なタイミングであったとしか言いようがありません。
なお、その後に受け取った書簡の一部も、スクラップブックの間にはさみこまれています。

宮沢賢治の書簡については、古くは『宮沢賢治 友への手紙』、最近のものでは『新校本宮沢賢治全集』で、小菅健吉の書簡については『氏家町史 史料編 近代の文化人』、河本義行の書簡については『アザリアの友へ 河本緑石書簡集』によって、その全貌を知ることができます。

『アザリアの友へ 河本緑石書簡集』は、1997年に河本静夫氏の編により緑石書簡集刊行会から刊行されたものですが、書簡はすべてコピーによる影印で収録されているため、書簡によっては判読が難しいものもありました。
そこで昨年の秋に講演を依頼されたことを機に『アザリアの友へ』に納められた河本義行書簡と保阪嘉内書簡の全文テキスト化に取り組み、昨年末にその作業を完了しました。
これを元に、このブログで本文とその注釈・解説を連載することを、今年の目標にすることに致しました。
『アザリアの友へ』を読むための参考資料として、またアザリアの友たちの交友を知る手がかりとしてお読みいただければ幸いです。


(注)ただし葉書は4枚をまとめて1頁に貼り込んでいるため、封書と葉書との間で多少前後しているところがあります。
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コメント 4

にじ

わたしが初めて緑石さんのことを強く印象づけられたのは、熊谷市八木橋百貨店を会場にして開かれた入沢康夫先生の講演の時でした。賢治学会のセミナーが熊谷・秩父などを会場に行われた年。とても大事な思い出です。
この連載、きっと先生もとてもお喜びでしょうね。
それから私事ですが、明後日からお伊勢まいりに行きます。ひょんなことで実現しました。賢治さんがお父さんと伊勢に行っているはずと友達に聞きました。そのエピソード、もしご存じでしたら教えてくださいますか。
by にじ (2014-03-01 05:25) 

azalea

長らくブログを休んでしまいましたので、何か目標があった方がいいかと思いまして、連載を始めることにしました。
入沢先生にも御覧いただけると良いのですが・・・。

ところで、お伊勢参りにいらっしゃるのですか、いいですね。
大正10年4月、家出して東京で一人暮らしをしていた賢治さんのところに父・政次郎さんが訪ねてきます。
そして二人で連れ立って伊勢・比叡山・法隆寺・奈良へと旅行します。
旅行のルートは最初から考えられていたもの(政次郎さんには何か用事があり、そのついでに父子旅行をしたとか)か、それともまず伊勢神宮に参拝してそれからなりゆきで比叡山や奈良を回ったか・・・よくわかりません。
でもまあ、この旅行が何となく父子の対立感情を解きほぐす契機になったような気がします。

「歌稿〔B〕」にはその時の短歌も記されています。
     (伊勢)
763  杉さかき 宝樹にそゝぐ 清〔せい〕とうの 雨をみ神に謝しまつりつゝ
764  かゞやきの雨をいたゞき大神のみ前に父とふたりぬかづかん
765  降りしきる雨のしぶきのなかに立ちて、門のみ名など衛士は教へし
766  透明のいみじきたまを身に充てゝ五十鈴川をわたりまつりぬ。
767  五十鈴川 水かさ増してあらぶれの人のこころもきよめたはん
768  みたらしの水かさまして埴土〔はに〕をながしいよよきよきとみそぎまつりぬ。
769  いすず川 水かさ増してふちに群るるいをのすがたをけふは見ずかも。
770  硅岩のましろき砂利にふり注ぐいみじき玉の雨にしあるかな。

     (内宮)
771  大前のましろきざりにぬかづきて、たまのしぶきを身にあびしかな。
772  五十鈴川 水かさ増してはにをながし天雲ひくく杉むらを翔く。
773  雲翔くるみ杉のむらをうちめぐり 五十鈴川かもはにをながしぬ。

     (二見)
774  ありあけの月はのこれど松むらのそよぎ爽かに日は出でんとす。

天候にも恵まれた、良い旅になるといいですね。
by azalea (2014-03-01 11:13) 

にじ

まあ、おいそがしい三月に、大変ありがとうございました。いろんな意味で、まさか自分がお伊勢さんに行くなんて、自分でもびっくりしているのですが、しっかりと、先入観なしに、自分が何を感じ取れるか、試してみます。
宗教・民俗学・歴史・文学。むずかしいけれど、自分の眼を確かめてみます。ありのままの向き合ってみます。
しっかりレポートできるように、記録に残せるようにがんばります。
心強いお助け、感謝です。
by にじ (2014-03-01 21:44) 

azalea

いえいえ、伊勢への旅の参考にしていただければ幸いです。
外宮・内宮それぞれに、そこから感じるものがあると思います。
美味しいものもたくさんありますし、いろいろな意味で鋭気を養える旅になるといいですね。

にじさんのブログで旅行記を拝見できるのを楽しみにしています。
by azalea (2014-03-02 08:58) 

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