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冬季セミナー in 東京 「宮沢賢治からのメッセージ」に参加して [研究に関すること]

宮沢賢治学会イーハトーブセンター冬季セミナー in東京 「宮沢賢治からのメッセージ」が12月4日(日)の午後に東京都立川市で開催されました。
何とか都合がついたので、私もセミナーに参加してきました。
立川に向かう中央線の車窓からは、富士山がきれいに見えました。

3月11日の震災で「雨ニモマケズ」が被災地の人々を励ます言葉として広まったことを踏まえ、宮沢賢治からのメッセージの意味を改めて考えてみようというのが今回のセミナーのテーマでした。
会場は200席弱くらいの感じのホールでしたが、セミナーが始まる頃にはほぼ満席になっていました。
そこここで久々に顔を合わせた人たちが挨拶を交わしたり、近況を伝え合っている姿も見られ、ちょっとした同窓会のような雰囲気もありました。
それだけ広範囲から、また万障繰り合わせて多くの人が参加をしたということだと思います。
私も会場ではひさびさにいろいろな方にお目にかかることができました。

セミナー表紙.jpg

第一部は、入沢康夫氏の講演「『雨ニモマケズ』と宮沢賢治」。
まずは「雨ニモマケズ」の受容についての話。谷川徹三・中村稔両氏の見解を例に「雨ニモマケズ」は人によって評価が分かれる作品で、「雨ニモマケズ」への抵抗感から賢治の他の作品を読む機会を失っている人があるのは惜しまれるといったことが語られました。

入沢氏もはじめは「雨ニモマケズ」が好きになれなかったとのことですが、この作品が綴られた背景を知ることによって見方が変わっていったそうです。次に賢治の昭和6年の動静や手帳の文言などを元に、どういう状況で「雨ニモマケズ」が手帳に記されるに至ったか。また、「雨ニモマケズ」という作品、特に「丈夫ナカラダヲモチ」という一文は病気に苦しんだ賢治の後半生を考えると、「今度生まれてきたらこんなふうに生きたい」という賢治の悲願、切実な祈りが込めたれたものであるといったことが語られました。

そして、最後に詩としての「雨ニモマケズ」について二点言及されました。一点目は、「雨ニモマケズ、風ニモマケズ・・・」と連用終止の文が次々と続いていくことによる〝詩としての形式美〟が見られることで、これは賢治がいろいろな詩形を試みる中で錬磨されていった技法を使った〝不思議な仕掛け〟になっていることが示されました。二点目は、「雨ニモマケズ」は本来は人をはげます詩ではなく、冒頭の「雨ニモマケズ、風ニモマケズ・・・」という言葉は本来「丈夫ナカラダヲモチ」にかかるものではあるが、その部分が一人歩きして人を元気づけている【註】ということについて。シャルル・トレネのシャンソン「詩人の魂」の歌詞を引かれ、作者が死んでから詩の一節が詩の一部が本体から離れて人を元気づけることはあって然るべきことで、それはある意味では詩人の名誉ではないかと思っていると結ばれました。

1時間弱の講演でしたが、あっという間に終わってしまった感じがし、とても感銘を受けました。
素晴らしいお話しをありがとうございました。

【註】似た例として坂本九の『上を向いて歩こう』を挙げられていました。言われてみればこれも本来は人を励ます歌ではなく、失恋して孤独の寂しさを堪えている歌ですから、本来のテーマとは違うところで歌詞の一部が人を励ます言葉として受け取られているということになりますね。とても分かりやすい説明でした。


第二部は、シンポジウム「『なぜ、いま宮沢賢治なのか』」を考える」。
平澤信一氏(明星大学教育学部常勤教授)の司会で、栗原 敦氏(実践女子大学文学部国文学科教授)、秋枝美保氏(福山大学人間文化学部教授)、富山英俊氏(明治学院大学文学部英文学科教授)の3氏がそれぞれの立場で発表されました。
栗原氏の発表は「〈ブドリ〉の発心―あたり前の民のひとりとして」というテーマでしたが、その中でブドリの死と比較してカムパネルラの死が取り上げられていましたが、カムパネルラの死に対する見解が私のものと近かったことに何となく心強さを感じました。

第三部は、林 洋子氏(女優・クラムボンの会主宰)によるひとり語り「雁の童子」。
今回は楽器を使わず、「声だけでしんしんと賢治の世界に迫る」(プログラムによる)迫力ある語りが披露されました。
記憶力の悪い私は、40分に及ぶ長い話を全部暗誦されているところにすっかり驚嘆してしまいました。


午後5時終了の予定でしたが、熱弁・熱演が続いて終わったのは5時半を回っていました。       
夜に懇親会が予定されており、せっかくnenemuさんにもお声をかけていただきながら大変申し訳ありませんでしたが、この度は欠席させていただき、帰途につきました。
(懇親会の状況は加倉井さんが「緑いろの通信」で紹介されています)
天候にも恵まれ、とても充実した1日となりました。
運営に当たられた事務局の皆様に御礼申し上げます。
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にじ

まあ、うれしいレポートでした。
雨ニモマケズ。私も心しましょう。その決意・発心。
入沢先生、銀髪がますますすいきになられていたかしら。うーん。お会いしたかったなあ。
加倉井さんもまた懐かしいお名前。もう足はバイクじゃないですよね。通信、これからのぞいてみます。
by にじ (2011-12-06 18:05) 

azalea

幸い休みが取れたので、セミナーに行くことができました。
加倉井さんがしっかり写真も掲載されていますので、入沢先生のお顔は御覧になれたことと思います。
立川にはひさびさに降りましたが、モノレールができてずいぶん変わりましたね。
by azalea (2011-12-06 23:00) 

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